べに山桜の旅

平成十一年やまつ辻田二十選べに山桜の旅三
木桶:しょうゆおけとして20〜30年使い込んだものを再加工したもの。まろやかな風味の梅干しができ上がる。

  【八月】
 
阪和道から御坊−湯浅道路を終点まで。
山の一本道を30分ほど南にゆけば土用干しの梅の香りがほのかにただよう紀州南部川村に入った。土用干しのハウスの中は40℃以上にもなるが梅の香り(クエン酸)をかぐことによって暑さに負けず作業できるそうだ。
昭和四十九年の梅干しを一粒いただいた。すばらしい風味に感激した。


二「紀州三年梅のこと」梅干しの本当
抗菌・疲労回復等、元来梅干しは長期保存のきく健康食品として日本人に親しまれてきました。それは梅干しの命とも言える酸味(クエン酸)によるものなのです。

○梅干し作りの工程
六月完熟に近い梅を木桶に塩と梅を交互に漬け込む。塩は18〜20%。減塩、うす塩と書いてある梅干しも実は、この段階ではこの塩度で漬け込みます。塩梅(あんばい)という言葉がある様に梅を漬けるときの塩は18〜20%にしなければよい塩梅に梅干しはでき上がりません。
七〜八月木桶につけ込んだ梅干しを真夏の太陽に天日干し。その後つぼに入れて保存。(三年ものはこの状態で三年間熟成を待ちます。)
現在市場の約9割を占める、減塩、うす塩の梅干し(調味梅)は、この天日干し後に脱塩処理がほどこしてあり、その時に塩と同時に梅干しの命とも言えるクエン酸まで流れてしまうために醸造酢等を加え酸味調整が行われています。
調味梅の酸っぱさと感じていたものは、実は梅本来の酸っぱさではなく、人工の酢により調整されたものだったのです。
私どもが梅干し作りをお願いしている方は、はやりの調味梅は一切作らず、かたくなに昔ながらの製法で梅本来のすばらしさを守り続けています。塩分が気になる方は、ひとつ食べていたものを半分にすればよいわけです。
忘れられていた本物の梅干しの香りをぜひ、もう一度思い出していただきたいと願っています。
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